心に不安や恐れなどがあると、周りの出来事や人間が、
歪んで見えてしまうことがあります。
うつとは、まさにそうした状態のことです。
自分の心の中の不安感が増大してくると、
心配する必要のない現実まで、不安や心配の種に見えてしまいます。
このような現実と異なったものの受けとめ方をしてしまう事を
「認知のゆがみ」といいます。
現実世界を正しく中立的に見ることができない状態です。
そして、アメリカのアーロン・ベック氏が確立した認知療法とは、
このゆがみを正し、ものごとを現実どおりに受けとめられるようにする治療法です。
簡単に説明すると、必要以上に悪く考えてしまうクセを治す方法で、
日本でもうつ病の治療に取り入れられ、かなりの成果を上げています。
認知のゆがみには、人によって幾つかのパターンがあります。
次に記述する傾向に当てはまれば、
認知にゆがみがあると言っていいでしょう。
つまり、うつの傾向があるということです。
・恣意的推論
これといった根拠や証拠もないのに、自分の考えだけで推論し、
勝手にこうだと決めつけてしまう傾向のこと。
例えば、「朝、上司に挨拶したのに、何も返事をしてくれなかった。
もしかしたらリストラ候補に挙げられているのでは」と
考えたりする事。
・二分割的思考
白か黒か、ものごとの判断基準が2つしかないタイプ。
完ぺき主義者の人に多く、例えば、
「営業成績がトップでないなら、ビリと一緒」などと考えたりする。
・拡大視、縮小視
自分の欠点や失敗を、救いようがないほど最低な事と大げさに捉え、
自分の長所や成功は、たいした事じゃない、と卑下する。
一方、他人に対しては、その逆に捉える傾向もある。
価値基準に一定の基軸がないこと。
・極端な自己関連づけ
例えば、電車の故障で遅刻したにも関わらず、
「もっと時間に余裕をもって出なかった自分が悪い」というように
なんでも悪いのは自分のせいだと考えるタイプ。
もしあなたにこのような傾向がある場合、
認知にゆがみがあると思われ、
うつ病にかかりやすい傾向にあるといえます。
認知のゆがみを治す事は、うつ病の予防にも繋がります。