SSRIは神経伝達物質のうち、セロトニン系だけを調整し、
他の部分には、全く影響を与えません。
つまり、三環系抗うつ薬のように、ノルアドレナリンを強化して、
無理に本人の意欲を出させるという作用は、全くありません。
逆に、セロトニンだけが強化される事で、
心の平常が保たれ、ストレスに対するコントロールもしやすくなり、
落ち着いた状態になります。
しかし、こうした状態になったとしても、
うつ病におけるその人自身の活動エネルギーは、
下がったままになっているので、
患者さんによっては、睡眠時間がやたらと多くなるといった症状も現れてきます。
これは、患者さん本人にとっては、
精神が昂ぶってよく眠れないといった症状から解放される事になるので、
質の良い休息が取れるともいえます。
しかし、このような寝てばかりの状況、
見た目にはほとんど活動できてない状態を見て、
患者さんの家族などは、
「以前よりも悪くなっているのでは?」
と受け取ってしまう事もあります。
そして、担当医に対して、SSRIの使用を止めて欲しいと
訴えるケースもあるようです。
この時に、「患者さんがなぜこういう状態になっているのか」を
医師がきちんと説明すればよいのですが、
しっかりした治療戦略を持っていない医師だと、
患者さんの家族の訴えをそのまま受け入れてしまう事もあります。
そうなると、また以前のようなうつ病の状態に戻ってしまい、
かえって治療が長引いてしまう事になります。
患者さんの家族もSSRIに対する正しい知識を習得すると共に
医師と密接に相談しあう事が必要となってきます。